金利が上がったのに、なぜ円が安くなったのか
2026年9月18日、日本の金利が上がりました。31年ぶりの水準です。このサイトの「金利」の記事には、こう書いてあります。――「国の金利が上がると、その国のお金は買われやすくなる」。でも、そうはなりませんでした。金利が上がった週に、円はむしろ安くなっています。ここを説明しないままにしておくと、あの記事を読んだ人が混乱します。だから書きます。
1. まず、起きたことだけを並べる
先週は、中央銀行が2つ動いた週でした。中央銀行というのは、その国の金利を決めているところです。
| 9月16日(水) | アメリカが利上げ。政策金利は 3.75〜4.00% に |
|---|---|
| 9月18日(金) | 日本が利上げ。政策金利は 1.25% に(0.25%引き上げ) |
日本の1.25%は、1995年以来、31年ぶりの高さです。決め方は9人での多数決で、7対2。2人は反対でした。
そして、同じ週の為替です。
| 9月14日(月) | 1ドル=154.38円 |
|---|---|
| 9月17日(木) | 1ドル=156.13円 |
| 動き | 円安のほうへ 1.75円 |
※為替の数字は日ごとの終値です。このデータでは、この週に最後に値が付いているのが9月17日でした。
それでも円は安くなった。
この2つは、どちらも起きたことです。
そしてもうひとつ、日付をよく見てください。この1.75円の円安が進んだのは、日銀が決める前の数日です。ここは3章でもう一度出てきます。
2. 見るのは「高さ」ではなく「差」
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
お金は、置いておくと利息がつきます。だから「どちらに置いたほうが、利息が多いか」という比べ方ができます。大事なのは、片方の国の金利の高さではなく、2つの国の差のほうです。この差を金利差といいます。
100万円を1年間置いたとして、ざっくり計算してみます。
| 日本(1.25%) | 12,500円 |
|---|---|
| アメリカ(3.75%) | 37,500円 |
| 差 | 25,000円 |
※説明のための計算です。税金・手数料・為替の動きは入れていません。
日本が0.25%上げたことで、この差は少しだけ縮みました。でも、差そのものはまだ2.5%以上あります。
しかも、忘れてはいけないことがあります。
片方だけが動いたのではありません。両方が動いて、差はあまり縮まらなかったということです。
3. 「もう知られていた」ということ
もうひとつ、覚えておくと役に立つ考え方があります。
日銀の会議は金融政策決定会合といって、日程が前もって公開されています。いつ開かれるか、みんな知っています。だから会議の前から「たぶん上げるだろう」という予想が広まります。
予想が広まると、決まるより先に、値段のほうが動いていることがあります。これを織り込み済みといいます。
そこからは大きく動かないことがある。
だから「発表された日に、発表のとおりに動く」とはかぎりません。順番が逆になっていることがあります。
先ほどの表を思い出してください。円安の1.75円は、9月14日から17日にかけて進んでいます。日銀が決めたのは18日です。つまり動いたのが先で、決まったのが後でした。
※これも「決まる前だったから織り込み済みだった」と決めつけることはできません。起きた順番だけを書いています。
4. では「金利が上がると円高」は間違いなのか
間違いではありません。ただ、いつでもそうなるわけではない、ということです。
「金利」の記事に書いたのは、しくみの説明です。ほかの条件が同じなら、そういう力が働きます。でも現実には、ほかの条件は同じではありません。
| しくみとして | 金利が上がると、そのお金は買われやすくなる |
|---|---|
| 現実には | 2つの国を比べた差、もう知られていたかどうか、そのほか多くのことが同時に効く |
だからこのサイトは、「日銀が利上げしたから円安になった」とは書きません。そう書けそうに見えても、書きません。
言えるのは、「日本が利上げした」「同じ週に円安が進んだ」という2つの事実と、報じられている見方として「日本とアメリカの金利差が縮まりにくい」という説明がある、ということまでです。
5. オルカンにとっては、どうだったのか
最後に、このサイトの数字に戻します。
| 9月18日の基準価額 | 37,532円(+371円 / +1.00%) |
|---|---|
| 世界の株 | +1.24% |
| 為替(ドル円)× 外貨95% | +0.07% |
| 説明しきれなかった分 | -0.31% |
気づくことがあります。1週間では円安が1.75円進んだのに、この日1日で見ると、為替の分は+0.07%しかありません。
理由はかんたんで、1日の記事は「前の営業日とくらべて」だからです。週のあいだに少しずつ進んだ円安は、それぞれの日に分かれて入っています。1日で見るのと、1週間で見るのは、別のことです。
ここでも「だからこうすべき」とは書きません。ただ、ニュースで大きく扱われた出来事が、その日の数字では小さく見えることがある――その見え方のちがいを知っておくと、あわてにくくなると思います。
6. まとめ
- 9/16アメリカ、9/18日本。1週間で中央銀行が2つ動いた
- 日本は1.25%=31年ぶりの水準。それでも同じ週に円安が進んだ
- 為替で効くのは片方の高さではなく、2つの国の差(金利差)
- 差はまだ2.5%以上ある。しかもアメリカも同じ週に上げている
- 会合の日程は公表されている。決まる前に動いていること(織り込み済み)もある
- 「金利が上がると円高」はしくみの説明。いつもそうなるとはかぎらない
・日本銀行 当面の金融政策運営について(2026年9月18日・公式PDF)
・日本経済新聞 日銀1.25%への利上げ決定(2026年9月18日)
・為替(ドル円)の数値:Yahoo Finance の日次終値
・基準価額と分解:このサイトの2026年9月18日の記録