分散とは何か ―― 1社だけ持っていたら、ぶれはどうだったか
「卵はひとつのかごに盛るな」。投資でよく言われる言葉です。たくさんのものに分けて持つことを分散といいます。オルカンは2,359銘柄に分けています(2026年9月30日時点。オルカンの中身)。では、分けると何が変わって、何は変わらないのか。オルカンの中の大きな会社を、1社だけ持っていたらどうだったかを、約8年の記録でくらべました。
1. くらべ方
くらべたのは、このサイトが毎日「世界の株」として使っているACWI(世界の株をまとめたETF)と、オルカンの組み入れ上位の会社です。2026年9月30日時点の上位10銘柄のうち、グーグル(Alphabet)は2種類の株が入っているので1つにまとめ、9社にしました。
- 期間:2018年10月31日(オルカンの設定日)〜2026年10月9日。アメリカの市場が開いていた1,995日
- どれもドルで見た値段で、配当を受け取ったら、その分で同じ株を買い足した場合(配当の再投資)の値で計算しました
- 「ぶれ」は、リスクとリターンと同じく、1日の動きのばらつき(標準偏差)を1年あたりに直したものです
※ACWIはオルカンそのものではありません。オルカンは円で見た値段で、中身も少しちがいます(指数とは何か)。
2. 1社だけだと、ぶれは大きかった
| 世界の株(ACWI) | 18.4% |
|---|---|
| Microsoft | 29.4% |
| Apple | 31.0% |
| Alphabet(グーグル) | 31.4% |
| Amazon | 34.7% |
| TSMC | 37.4% |
| Meta | 42.1% |
| Broadcom | 42.4% |
| NVIDIA | 51.0% |
| Micron | 54.0% |
※1年あたりのぶれ(ドルで見た値段・配当込み)。
9社とも、1社だけのぶれは、ACWIより大きかったのです。いちばん小さいMicrosoftでも29.4%、いちばん大きいMicronは54.0%で、ACWIの約3倍でした。
いちばん高いところから、どこまで下がったか(下げの記録と同じ数え方)でも、ちがいが出ています。
| 世界の株(ACWI) | -33.5% |
|---|---|
| 9社のうち、いちばん浅かった会社(Apple) | -35.8% |
| 9社のうち、いちばん深かった会社(Meta) | -76.7% |
Metaは、いちばん高いところから4分の3以上下がった時期がありました。9社のうち5社は、半分以上下がったことがあります。
3. 9社を同じ金額ずつ持っても、まだACWIより大きかった
では、この9社を同じ金額ずつ持っていたら(毎日、同じ金額ずつになるように持ち直す計算。売買の手数料や税金は入れていない、計算の上の数字です)、どうだったか。
| 1社ずつのぶれの平均 | 39.3% |
|---|---|
| 9社を同じ金額ずつ | 29.9% |
| 世界の株(ACWI) | 18.4% |
9社に分けると、1社ずつの平均よりぶれは小さくなりました。それでも、ACWIよりはずっと大きいままでした。
この9社は、9社のうち8社がアメリカの会社で、多くがパソコン・スマホ・AIに関係する会社です(オルカンの中身)。似た会社どうしは、同じ日に同じ向きに動きやすいので、数を分けても、ぶれはあまり小さくならないと一般に説明されます。分散で大事なのは数だけでなく、ちがう動きをするものを混ぜることだ、という説明です。この計算は、その説明と合う向きの結果でした。
4. ★それでも、みんなが一緒に下がる日は避けられなかった
分散しても、どうにもならない日があります。ACWIが1日で2%以上下がった日は59日ありました。その日、9社がどう動いたかを数えました。
| ACWIが1日で2%以上下がった日 | 59日 |
|---|---|
| そのうち、9社が全部下がった日 | 53日 |
ACWIがいちばん大きく下がったのは、2020年3月16日の-11.22%です。この日、9社は全部下がっていました。下がった日の大きい順に10日をならべると、そのうち9日は、9社が全部下がっていました。
5. 反対に、分けたぶん、1社の大きな伸びも薄まった
同じ期間の、全体の増え方です(ドルで見た値段・配当込み)。
| 世界の株(ACWI) | +170.5% |
|---|---|
| 9社のうち、いちばん小さかった会社(Amazon) | +228.4% |
| 9社のうち、いちばん大きかった会社(NVIDIA) | +4,301.2% |
この期間は、9社とも、ACWIより大きく増えていました。ここだけ見ると、「1社を選んだほうがよかった」と見えます。
分散すると、1社がとても大きく伸びたときの分も、全体の中では小さくなります。ぶれが小さくなることと、1社の大きな伸びが薄まることは、同じしくみの表と裏です。
6. じゃあ、どう見ればいいのか
こうすべき、とは書きません。分かったことだけを並べます。
- オルカンの上位9社は、1社ずつだと、どれもACWIより大きくぶれた(29.4%〜54.0%。ACWIは18.4%)
- 9社を同じ金額ずつ持っても29.9%で、ACWIより大きかった。似た会社どうしでは、数を分けてもぶれは小さくなりにくい
- ACWIが2%以上下がった59日のうち53日は、9社が全部下がった。分散しても、まとめて下がる日は避けられなかった
- この期間は9社ともACWIより大きく増えた。ただし9社は「あとから見て上位の会社」なので、伸びた会社が集まりやすい選び方になっている
どれくらいのぶれなら受け止められるかは、人によってちがいます。この記録は、そのことを考えるための材料のひとつです。
7. まとめ
分散は、ぶれを小さくしやすくするしくみです。約8年の記録では、上位の会社を1社だけ持つと、世界の株全体より1.6倍から3倍ほど大きくぶれていました。いっぽうで、世界の株がまとめて下がる日には、分けていても一緒に下がりました。そして分けたぶん、1社の大きな伸びも薄まります。「分散しているから安心」でも「1社に絞れば大きくもうかる」でもなく、何が小さくなって、何は残るのか。記録が見せてくれるのは、その両方です。
数字の出どころ:ACWIと9社(NVIDIA・Apple・Microsoft・Amazon・TSMC〈アメリカで取引される株〉・Alphabet〈A株〉・Meta・Broadcom・Micron)の値段はYahoo Financeの日ごとの値(配当と株式分割を調整した値=「Adj Close」)です。9社は月次レポート(作成基準日 2026年9月30日)の組入上位10銘柄から選びました。ぶれ・下げの深さ・増え方・日数は、2018年10月31日〜2026年10月9日の1,995日(9社とACWIの値がそろった日)について、このサイトが計算した値です(1年あたりのぶれは、1日のぶれ×252の平方根。アメリカの市場は1年に約252日開いているため)。オルカンの-33.81%は投資信託協会の基準価額から計算した値です。
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