為替ヘッジとは何か ―― オルカンは「ヘッジなし」。約8年で、為替はどれだけ効いたか
外国の株を持つ投資信託には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」があります。オルカンは「なし」です。だから、オルカンの値段は、世界の株の動きに加えて、円高・円安の動きもそのまま受けます。では、この約8年で、為替はオルカンにどれだけ効いてきたのか。オルカンの基準価額と、ドルで見た世界の株と、ドル円を並べて数えました。
1. 為替ヘッジは、為替の動きを小さくするしかけ
日本の投資信託が外国の株を買うときは、まず円をドルなどに替えて、そのドルで株を買います。あとで円にもどすとき、円高になっていれば、同じドルでも受け取る円は減ります(円高・円安)。
為替ヘッジは、この「円にもどすときのレート」を、先に約束しておくしかけです(為替予約)。約束しておけば、そのあいだに円高になっても、円安になっても、為替の動きの影響は小さくなります。
| ヘッジなし | 世界の株の動き + 為替の動き を、両方受ける |
|---|---|
| ヘッジあり | 世界の株の動きを、おもに受ける(為替の動きは小さくなる。ただし、ゼロにはならない) |
2. オルカンは「ヘッジなし」
オルカンの月次レポートには、「原則として、為替ヘッジは行いません」と書かれています。リスクの説明の欄にも、為替ヘッジをしないので、為替の動きの影響を大きく受ける、という意味のことが書かれています。
このサイトで毎日出している分解の表の、「為替(ドル円)× 外貨95%」の行は、この「ヘッジなし」の影響を、その日ぶんだけ、おおよそで取り出したものです。ドル円の動きに、外貨の割合を約95%として掛けています(日本の株の約5%は、もともと円で値段がつくので、円に換算するときの為替の影響は受けません。オルカンの中身)。
3. 約8年で、為替はどれだけ効いたか
オルカンの基準価額は、2018年10月31日の10,000円から、2026年10月27日には37,441円になりました。これを、「世界の株の動き」と「為替の動き」に分けて並べます。
| ドルで見た世界の株 | +167.83% |
|---|---|
| ドル円 | 113.05円 → 157.53円(+39.35%、円安) |
| オルカン(円で見た値段) | +274.41% |
※「ドルで見た世界の株」は、世界の株にまとめて投資するアメリカのETF(iシェアーズ MSCI ACWI ETF)の、配当込みの値です。オルカンが目標にしている指数(MSCI ACWI)に近い動きをしますが、ETFの費用などがあるので、まったく同じではありません。日付は、オルカンの基準価額に入る日の前日の、アメリカの値です。
2つを掛け合わせると(2.6783倍 × 1.3935倍 = 約3.73倍)、約+273%になり、オルカンの+274.41%とおおよそ合います。この約8年は、世界の株の上がり分に、円安の分が上乗せされていました。
4. 年ごとに見ると、為替は味方の年も、反対の年もあった
同じ並べ方を、1年ごとにします(それぞれ、前の年の最後の営業日から、その年の最後の営業日まで)。
| 年 | ドルで見た世界の株 / ドル円 / オルカン |
|---|---|
| 2019年 | +27.99% / -1.29% / +26.82% |
| 2020年 | +15.44% / -5.36% / +8.96% |
| 2021年 | +19.47% / +11.00% / +32.71% |
| 2022年 | -18.13% / +15.63% / -5.58% |
| 2023年 | +21.77% / +6.41% / +30.42% |
| 2024年 | +18.77% / +11.63% / +32.48% |
| 2025年 | +21.62% / -1.18% / +20.51% |
7年とも、ドル円がプラス(円安)の年は、オルカンが「ドルで見た世界の株」より上に、マイナス(円高)の年は下に来ています。
- 2022年:ドルで見た世界の株は -18.13%。でも、ドル円が +15.63%(円安)だったので、オルカンは -5.58% でした。この年は、ヘッジなしの為替の動きが、下がり幅を小さくしていました。
- 2020年:ドルで見た世界の株は +15.44%。でも、ドル円が -5.36%(円高)だったので、オルカンは +8.96% でした。この年は、為替が上がり幅を小さくしていました。
5. 短い期間では、為替のほうが大きく効いたこともある
2024年7月10日から9月17日まで(約2か月)を見ます。
| ドルで見た世界の株 | +1.73% |
|---|---|
| ドル円 | 161.33円 → 140.79円(-12.73%、円高) |
| オルカン | 27,008円 → 23,890円(-11.54%) |
世界の株は、ドルで見ると少し上がっていたのに、オルカンは1割以上下がりました。この2か月のオルカンの下がり幅は、ほとんどが円高の分でした。ヘッジなしは、こういう期間も、そのまま受けます。
6. ヘッジには、費用がかかる
では、ヘッジをすれば為替の心配はなくなるのか。ヘッジには費用があります。その大きさは、おもに、2つの国の短い期間の金利差で決まります。
運用会社(野村アセットマネジメント)の説明にある例を、そのまま使います。
| 前提(たとえの数字) | 約束する時点で1ドル=100円。円の金利が年1%、ドルの金利が年3% |
|---|---|
| 1年後 | 100万円は101万円に、10,000ドルは10,300ドルに増えている |
| 金利の差で有利・不利が出ないように決める、約束のレート | 101万円 ÷ 10,300ドル = 約98円 |
| ヘッジの費用 | 100円と約98円の差=約2円ぶん(約2%) |
この例では、2つの国の金利差(3% − 1% = 2%)と、ほぼ同じ大きさになっています。日本の金利が、相手の国の金利より低いあいだは、ヘッジをすると、そのぶんの費用が毎年かかります。反対に、日本の金利のほうが高いときは、費用ではなく、上乗せ(ヘッジプレミアム)になります。
この費用は、請求書が来るのではなく、ファンドの財産から引かれて、基準価額に表れます(手数料の比べ方)。
7. ★この数字を、どう受け取ってはいけないか
- 「ヘッジなしのほうが、もうかる」という意味ではありません。この約8年は、全体として円安だった期間です。円高が続く期間なら、為替は反対に働きます(2020年や、2024年夏のように)。
- 「ヘッジありのほうが、安全」という意味でもありません。ヘッジをしても、世界の株そのものの上げ下げは残ります(2022年の -18.13% のように)。そして、ヘッジには費用がかかります。
- 表の「ドルで見た世界の株」は、ヘッジありの投資信託の成績ではありません。実際のヘッジありの投資信託は、ここからヘッジの費用などが引かれ、中身もちがいます。
- これから円高になるか、円安になるかは、書きません。前もって分かる人はいません。
8. じゃあ、どう見ればいいのか
こうすべき、とは書きません。分かったことだけを並べます。
- オルカンは「ヘッジなし」なので、世界の株の動きと、為替の動きを、両方受ける
- 約8年(2018年10月31日〜2026年10月27日)では、世界の株 +167.83%、ドル円 +39.35%、オルカン +274.41% だった
- 年ごとに見ると、為替が味方の年(2021〜2024年)も、反対の年(2019年・2020年・2025年)もあった
- 2か月ほどの短い期間では、為替の動きのほうが大きく効いたこともあった(2024年夏 -11.54%)
- ヘッジには費用がかかり、その大きさは、おもに2つの国の短い期間の金利差で決まる
このサイトの毎日の分解の表では、その日のオルカンの動きのうち、おおよそどれだけが為替の分だったかを、毎日見られます。
9. まとめ
オルカンを持つことは、世界の株と一緒に、円とドルの交換レートも持つことです。ヘッジは、その為替の動きを小さくするかわりに、費用がかかるしかけです。為替が味方になるか反対になるかは、期間によって入れ替わってきました。
数字の出どころ:基準価額は投資信託協会の公表データ(2018年10月31日〜2026年10月27日)。「ドルで見た世界の株」はETF「ACWI」の配当込みの値、ドル円はどちらもYahoo!ファイナンス(米国版)の日足から、このサイトで計算しました。オルカンが為替ヘッジをしないことは月次レポート(作成基準日 2026年9月30日)の「ファンドの特色」と「投資リスク」の欄です。ヘッジの費用の例は野村アセットマネジメント「『為替ヘッジ』の仕組みとは?」の説明をそのまま使いました。
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